
REIT市場が大きく盛り上がる要因となりました大事件が起こりました。
スターアジア不動産投資法人が2019年5月10日付でさくら総合リート投資法人へ合併提案を行いました。
そしてその内容が事実上の乗っ取りではないかという物でさくら総合リート投資法人が敵対的買収であることを公表し、抵抗するという流れになっております。
これはスターアジアが悪!という話だけで済ませてよい問題ではありません。
システム的に、こういった攻撃方法があり、
また著しく株価、NAV倍率が低かったという部分も問題があったのではと思います。
今後もこのような攻撃手段に出てくるところは増えてくるのではないかと正直思っております。
詳しく見ていきましょう
目次
さくら総合リート投資法人ってどんなREIT?
以下の記事で公開している通り、
スポンサーにはオーストラリアのガリレオグループ(不動産会社)と日本管財グループがついておりました。
現在では5%程度の利回りとなっておりますが、一時は6%の利回りに届くこともあり、高い配当金を持っていました。そして株価はそれに見合わないという背景がありました。
時価総額としては300億円程度
NAV倍率としては現在は約1.0、こういった騒動の前では0.9を割っている状況でした。
まだまだ2016年9月に上場ということで歴史としては浅いですのでこれから徐々に大きくのなっていくのかなという感じの状況でした。
対するスターアジア不動産投資法人ってどんなリート?
一方でスターアジア不動産投資法人はどのような形だったのでしょうか。
以下の記事で公開している通り、
スポンサーにはスターアジアグループがついております。
現在では5.2%程度の利回りとなっておりますが、少し前では5.7%程度でした。
時価総額としては580億円程度
NAV倍率としては現在は約1.06、こういった騒動の前では0.97と1までは届かない程度でした。
同じく、2016年度に上場しており、ほぼ同時期でどちらも小規模REITという域の投資法人となっております。
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今流行のクラウドファンディングです。
仕組はREITに近く、皆様から投資を少しずつ集め、資金調達のニーズがある会社に対して投資を行うプログラムです。
そこで発生する金利の一部が分配される形となります。


こちらもリスクは勿論ありますが、利回りとしてはやや大きめになりますので資産のうち、一部であれば効果的に運用が可能だと思います。
いきなり資産の90%を1か所に預ける!とかは絶対ダメですよ!
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リート市場において、合併は今までにも行われてきたのになぜ今回は話題になったのか。
通常であれば合併とは両者が納得した上で行われる。
しかしながら今回スターアジアが行ったものはそれとはまったく異なるものであった。
第一段階の提案として、【さくらREITの執行役員と資産運用会社】を解任するというものである。
言い分としてはざくっというと運用方法が悪いから、うちがやったらもっと利益をあげられるというものであり、普通にそれだけを見るのであれば良いのでは?と思ってしまうようなものでした。
そして第二段階の提案として、第一段階が成立した後に合併条件を協議して、その賛成反対を求めるというものである。
さくら側としては、役員と資産運用会社を変えられた上で、合併条件を変えるというものである。
つまり好き勝手においしい物件だけ安く奪われて、スターアジアグループだけが得をするようにされてしまうというものである。
現在ホームページでも以下の通り、敵対的買収であることをしっかり指摘し、脅威を指摘しております。

5月17日時点でも出ておりましたが、
スターアジアグループからの提案に対する見解
http://sakurasogoreit.com/file/info-7bcd708526bc3319341a93dbc73efa4397c3a4f5.pdf

上記のような形で【WARNING】といった形で警告を呼び掛けております。
スターアジアが今回のアクションで何をしようとしているのか
今回ここまで外に呼びかけてまで防衛しようといったアクションをとっているのには理由があります。
それは【みなし賛成制度】といったものがあります。
それは投票しなかった場合は【賛成】を得たものとみなされる制度です。これを利用した形になります。
また投資口3%を6か月以上保有している場合、投資主総会の招集権限を有することになる、といったルールもあります。
これらを利用すると個人投資家が多いREIT市場において、合併についての話を行うことなく、合併に向けたアクションが取れてしまうようです。
- 投資口3%以上を6か月以上保有し、投資主総会の招集・開催を行う
これをライオンパートナーズというスターアジアグループの会社が行っております。
- みなし賛成+一部の賛成のみで成立してしまう
このルールを利用し、運用に関する議論や合併提案に関する協議・交渉を行うことなく、【執行役員の変更】【資産運用会社の変更】が可能になります。この場合、みなし賛成を得られ、かつ半数の賛成で要件が成立するようです。(本来は3分の2の賛成がないと合併は成立しない。)
これらが成立してしまうとさくら総合リート投資法人の投資主にも、元々いた資産運用会社の意図とは異なっていたとしても承認することが可能になってしまいます。
またスターアジアが指摘している運用実績等が悪いという部分に関しても以下の通り、さくら側の方が運用実績を出すことが出来ております。


数字上でもしっかりと実績を出すことが出来ておりますね。
ここから読み取れることは、うがった見方になるかもしれませんが、
【スターアジアグループの利益の為に】
【ルールを悪用して】
【さくら総合リートと一切の交渉を行うことなく】
【おいしい物件だけを奪い取ろうとしている】
という認識にならなくもないということになります。
全ての原因はNAV倍率の低さもある
NAV倍率とは、不動産を時価評価した純資産価値に対する投資口価格の割安度を表す指標です。株式におけるPBR(株価純資産倍率)に似た指標となっています。
NAV倍率が低い程割安と言えます。NOI(Net Operating Income)とは、不動産の賃貸収入から費用(減価償却費を除く)を差し引いた純収益を示します。
www.japan-reit.com/ranking/
ということであり、1倍を下回っていると投資口価格が安く、物件に対して安く投資が出来るという事にもなります。
さくら総合リートは
NAV倍率としては現在は約1.0、こういった騒動の前では0.9を割っている状況でした。
ざくっというと、0.9は全ての株を買い取って、物件を売ったとしても利益が出てしまうのでは・・・?ということになります。
つまりこういった買収の餌食になりやすいということにもなります。
REIT市場は高値になっておりますので、物件が良い値段で入れられなくなっております。
その為、新たな物件を仕入れることが出来ず、規模も大きくしていくことが難しくなっております。
そういう意味では投資法人自体を魅力的にすることが出来ず、買いたたいてやろうと思われてしまったみらい総合リートにも責任があるかもしれないということです。
勿論株主という個人目線からすると安いのは非常に魅力的はありますが、こういったリスクも当然想定しております。
その為、今回の件を事例にして、REIT市場の統廃合をしっかりと行い、一定の規模を確保し、まとまっていくこともありなのではないかと思います。
現在は
不動産投資信託(REIT)のさくら総合リート投資法人は4日、三井物産系の投資法人みらいとの合併を目指すと正式発表した。スターアジア不動産投資法人から受けている合併提案への対抗策として、8月30日に開催予定の総会に合併案を提出する。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO46980420U9A700C1EE9000/
さくらの運用会社と執行役員を、それぞれみらいの運用会社と同社出身者に変更することを提案する。スターアジア側も同様の提案を出している。総会はさくらの投資主(株主)に対して、スターアジアとみらいのどちらが合併相手にふさわしいかを問う構図になる。
さくらには5月、スターアジアが合併提案をした。被提案側が合意していないREIT初の「敵対的M&A(合併・買収)」となる。
日本経済新聞にも7月4日に出ていた通り、投資法人みらいとの合併を目指し、スターアジアからの敵対的買収から防衛することを伝えております。
まずは8月30日に投資主総会があるようですのでそこでひとまずの結果が出てくると思います。
また様々ご意見があるとは思いますが、私は今回のことで皆様にREIT(リート)市場に目が向き、さくら総合リート、スターアジア不動産の株価がどちらもあがりましたのである意味では良かったのではないかと思っております。